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君のこころは僕のなか

君のこころは僕のなか 4

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毎日大学に行って、課題に追われたりダンスの練習に誘われて夜遅くまでやっていれば、一週間が過ぎるのなんてあっという間。




気が付けばまた土曜日になっていて、俺はバイト先であるテーマパークへと電車で向かう。



今日はドンヘはいない。
大学のゼミの課題をやるために集まりがあるのだと言っていた。





土曜日の電車は、どこかに出掛けるのだろうか家族連れや学生が多く、その中には俺と同じく、多分テーマパークに行くのだと思われる人もちらほらいた。


向かいの席に座っている親子もきっとそう。
まだ小さい女の子が、キャラクターのキーホルダーをバッグに付けて、服装もテーマパークの内装に合わせてか大きなリボンの付いたお姫様のようなワンピースを着ている。



よほど楽しみなのか、両隣りに座る親に始終にこにこしながら話し掛けている姿が微笑ましい。




その女の子の様子を見て、ふと、この間のシムのことを思い出した。

……シムも、こんな感じで俺に話し掛けてきたっけ。




あの衝撃的な出会いから一週間。

大学でも見かけたらやっぱり気になってしまって、でも当たり前なんだけれどシムの方に変化はない。


無表情で、ただ早足で歩く彼。

一度だけ、たまたま後ろを歩いていたシムと目が合ったから驚いたことはあったけれど……それだけだ。




毎週来ているらしいから、今日も勿論来るのだろう。




直接話したことはないのだから本当のシムがどんな性格なのか知らないし、だから苦手だと思ったことはない。
周りには、睨まれたとか無視されたとか言ってる奴らもいるけど、実際に俺がされたわけではないから何とも言えない。


大学では本当の自分を隠しているのだから、何か事情があるのだと思う。

シムと会うのが憂鬱、というわけではないのだけれど、どう接したらいいのかやっぱり分からない。






………でも、やるしかないんだよなあ。





気が付けばテーマパークの最寄りの駅に着いたらしい。
アナウンスが流れて、ぞろぞろと人が降りて行く。

考えるのをやめて、俺も前を歩く人に続いて電車を降りた。










「この間よりサマになってるんじゃない?」



「そうですか?でも全然まだぎこちない動きしかできなくて」




隣に立つイェソンさんに笑ってそう返す。




「徐々に慣れていけばいいよ。ファンを作るのだって、急にたくさんは無理なんだから。少しずつ、ね?こうしてポッピーをやってくれるだけでもありがたいよ」




「……頑張ります」




「今日は毎年この時期にやっているパレードの初日なんだ。いつもより混むと思うから、気を付けて。何かあったらすぐに呼んでね」






そう言ってイェソンさんは俺を送り出した。




オープンしてからそう時間が経っていないはずなのに、確かにパーク内にはすでに沢山のお客さんがいた。
ぶつからないように気をつけなきゃいけないけれど、仕事としてはやりがいがありそうだ。

この間はポッピーの人気のなさに心が折れそうになったけど、俺が頑張れば少しはファンが増えるのかも知れない。




……普通に愛嬌のある顔をしてるんだから、もう少し人気が出たっていいのに。


そう思う俺は、ポッピーに少し愛着が湧いて来たらしい。










パーク内を一周して休憩を取り、また戻って辺りを歩き回る。

12時からパレードが始まるらしく、徐々にお客さんがテーマパークの中心にある広場に集まりはじめているようだ。




その様子をゆっくり歩きながら眺めていたら、突然背中に衝撃が来た。


あまりに不意打ちだったから、思わず被り物の中で小さく「うわっ」と言ってしまった。





後ろから突撃してくる、この感じは。





「ポッピー!」





この間と同じように、俺の名前を呼ぶ大きな声。



身動きが取りづらくて、ゆっくりと振り返る。
俺の胴体に腕を回して抱きついているのは、やっぱりシムだった。





この間はお昼過ぎに来たから、今日もそのくらいに来るのかと思っていた。


まだ心の準備ができてないんだけど?
自分を落ち着かせるために、ふう、と息を吐いた。


それからシムに視線を移す。




今日のシムも、大学生の男にしては少し可愛らしい格好をしている。
淡い色のロゴがプリントされた大きめの白いパーカーに、黒のスキニ―パンツ。
足元はレースアップの黒のショートブーツで、シムのスタイルの良さが際立っていた。



すごく、似合っていると思う。

似合ってるんだけど、ただ、やっぱり見慣れない。





シムがなかなか離れないかどうしたものかと思っていたら、突然パッと顔を上げた。





「ポッピー?」





そのまま不思議そうに首を傾げる。
俺もそんなシムの様子を不思議に思って首を傾げる。





「抱きしめてくれないの?いつもしてくれるのに……」





そう言って、しゅん、と項垂れる。





俺はその発言に、被り物の中で白目を剥きそうになった。




おいおい、マジかよ。
いつも、って……シムとポッピーってそんなに仲良いの?
それが2人の挨拶的な?
俺、毎回シムを抱きしめなきゃいけないの?



どうしたらいいんだろう。

手を空中で彷徨わせていると、シムの眉がどんどん下がっていく。
このままだと、泣いてしまうんじゃないかってくらい。



それは困るから、おそるおそるシムの背中に手を回せば、すっぽりと収まるその身体。



勿論、着ぐるみを着ているのだから直接シムに触れているわけではない。
けれど何だか妙に緊張感があって、触れてはいけないものに触れたような感覚だ。




離すタイミングも分からなくてしばらくの間そうしていたら、満足したのかシムが手を離したから俺もパッと離す。





「えっとね」





次は何だと思っていたら、背中に背負ったリュックの中からシムが携帯を取り出した。





「この間、ポッピーのお弁当作ったんだ」





俺の、弁当?

どういうこと?と思っていると、ほら、とシムが携帯の画面を俺に見せてくれる。
正直視界が狭いからかなり見づらいのだけど、顔を近づけて目を見開く。




ああ、なるほど。

ポッピーのキャラ弁ね。
どうやらポッピーの顔がご飯で作られているようだ。その周りにおかずがあるけど、それもカラフルでまるで周りにお花が咲いているように見える。


……ていうか、シムって料理できるんだ。
確かに何でも器用にこなしそう。
だけどこの普段から料理をやる人しか作れなさそうなレベルの高いお弁当に、率直に、凄いなと思った。





「すごいでしょ?」






そう言って、じっと俺の顔を見つめる。
多分、褒めて欲しいのだろう。



シムがまるで主人からのご褒美を待つ犬のようになっている。





……こういう時って、どうすればいいんだ?
普通だったら、凄いとか美味しそうとか、言葉で言えるのに。

喋れないのって、なかなか難しいんだな。
表現の仕方、もうちょっと勉強しなきゃ。



とりあえず悩みに悩んで、シムの頭の上に自分の手を乗せた。
それからもふもふと上下に動かす。





シムが驚いたように目を見開く。

あれ、違った?
ていうか、普通に拍手してあげれば良かったんじゃ……。



そんなことを思ったけれど、もう遅い。






「ポッピーが、撫でてくれた…!」






どうやらシム的にはこれが大正解だったらしい。
よほど嬉しいのか、ぷるぷると震えている。
照れているのか、その顔は真っ赤だ。


褒めて欲しそうにしてたくせに、実際に褒められるのは弱いらしい。


照れ隠しか何なのか、もう一度俺のお腹に勢いよく抱きついてきた。





……喜んでもらうのって、こんなに嬉しいんだ。

全身で嬉しさを表現してくれるシムに、俺もなんだか心が温かくなる。





関わることのない、遠い存在だと思っていたけれど。


ちょっとずつ、シムのことが分かってきたような気がする。





可愛いものが好きで、料理が上手で、恥ずかしがり屋。




みんなが言うような、冷たい人間なんかじゃない。
素の性格を見せたら、もっと周りに人が集まりそうなのに……。




勿体無いな、なんて思いながら、俺もシムの背中に手を回した。







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Comments 4

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2019/11/04 (Mon) 11:03 | EDIT | REPLY |   

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2019/11/04 (Mon) 13:57 | EDIT | REPLY |   

ニカ  

happy***さま

コメントありがとうございます〜(⌒▽⌒)
幼い頃のチャンミンで想像してください…
このお話のチャンミンはごりごりに可愛い系にしてます←

気付いちゃいましたか?元々のポッピーの人はチャンミンのことが好きなので、いつかこの人視点でも書きたいと思ってるのですが…(需要なさそう…)

続きも楽しみにしていただけると嬉しいです!

2019/11/06 (Wed) 14:56 | EDIT | REPLY |   

ニカ  

くぅ**さま

コメントありがとうございます〜(*´◒`*)
戸惑わせちゃってすみません…
チャンミンにアイドルばりの可愛い服を着せたいという願望が前面に出てます…
性癖がバレたみたいで恥ずかしいですね←

次のお話からちょっと距離が近づきます(⌒▽⌒)
楽しみにしていてください!

2019/11/06 (Wed) 15:00 | EDIT | REPLY |   

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