FC2ブログ
SHE
俺の天使

俺の天使 12

2



Side C








ユノさんが来ない。


入店音が聞こえるたびに入り口を気にしたって、入ってくるのは違う人。何度も時計だって見てみるけれど、ユノさんがいつも来ている時間はもうとっくに過ぎている。





ユノさんがこのコンビニに来るようになってから一ヶ月くらいが経つけれど、こんなこと初めてで。







仕事が忙しいとか、体調を崩しているとか…。


色々理由を考えては見るけれど、結局ユノさんと僕はただのお客様と店員という関係なわけで、連絡先も知らなければプライベートで何をしているかも知らない。だから考えたところで正解なんて分かるはずもなくて。





以前の僕だったら、常連のお客様が来なくたって、ああ今日は来ないんだなと思うくらいで特に気にしなかったはずなのに。


接客をするのは好きだけれど、お客様のプライベートに踏み込むつもりはないし、僕も踏み込ませるつもりはない。







-それなのに。
最近の僕はどこかおかしい。






ユノさんが来るのをちょっぴり楽しみにしている自分がいる。

ユノさんは、入店して僕を見つけるとほんの少しだけ目尻が下がるんだ。他のスタッフが見ても分からないくらいの変化。その視線を向けられる対象が僕だから分かること。
それが今日は見ることができないなんて。








「はあ…本当に何してるんだろう」






ユノさんと知り合ってから、不本意な行動をすることが多くなったような気がする。





結局僕が上がる時間までユノさんは来なくて、少し、ほんの少しだけ気になって、こんなところまで来てしまった。





この間一緒に帰った時に知った、ユノさんが住むマンション。

その前に立って、下からずっと、一番上まで眺める。






もちろん部屋がどこなのかなんて知らないから、ここに立っていたってユノさんが今どこにいて何をしているかなんて分かるわけないのに。もしかしたら家にだっていないのかも知れない。







そうして何分かの間、どうすることもできずにぼうっと突っ立っていた。マンションから出てきた女性が、出入り口の前に立つ僕をちらっと見て顔をしかめたのを見てハッと我に帰る。







これじゃあまるで不審者みたいじゃないか。







「…馬鹿みたい」








もう帰ろう。
今日だけ、たまたま理由があって来れなかっただけだ。きっとそう。明日来店したら、昨日はどうしたんですかって、聞けばいいじゃないか。






そう自分に言い聞かせて歩きだし、僕の家の方に向かう曲がり角に差し掛かった時。








背後で寒いだのなんだのはしゃぐ若い男性の声が聞こえてきたかと思えば、それに応えるようにもう一人、男性の声がした。





低く落ち着いたその声が聞き覚えのあるものだったから、振り向こうとしたら。








「チャンミン!」







急に大声で自分の名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がる。

ゆっくり振り向けば、僕の数メートル後ろにユノさんが立っていた。







ーああ、ユノさんだ。
とりあえずいつもと変わらない元気そうな姿にほっと胸を撫で下ろす。

スーツではなく私服姿だから、今日は仕事が休みだったのかも知れない。






でも…。





ユノさんは笑顔で僕の方に向かってくるけれど、その隣にいる男性は一体誰なのだろうか。






ユノさんと距離が近くなるにつれてシルエットがはっきり分かるようになって気が付いたのだけれど、二人は腕を組んでいた。





僕よりもだいぶ年下なのではないかと思う。男性と言うよりかは、男の子、と言った方がしっくりくるような。

金髪のさらさらとした髪。色白で、男性にしてはだいぶ可愛らしい顔立ち。





ますますユノさんとの関係が分からない。

仲が良いようだけれど、弟にしては顔が似ていないし、友達にしてはユノさんとは雰囲気が違うような気がする。







こんばんは、と言うユノさんに挨拶を返せば、その子も組んでいた腕をほどいて挨拶をする。






お辞儀をする仕草も言葉遣いもいやに丁寧。失礼だけれどその幼い顔立ちの割に意外だな、なんて思っていたら、まさかユノさんの秘書だなんて。






ということはユノさんは社長とか、きっとそういう秘書が付くくらいの偉い人なのだろう。


ただのサラリーマンだと思っていたから少し驚いたけれど、妙に納得するところがあって。







なんだかんだ言って、包容力というか、なんでも受け止めてくれそうな余裕があるんだよな、ユノさんは。






だから秘書だというこの子だって、こんなにユノさんに懐いて親しくしているのだろう。




初対面の僕に対しても人懐こそうな笑顔を浮かべているし、ユノさんも可愛がっているんだろうなというのが見ただけで分かる。








誰に対してだってきっとそうなんだ、ユノさんは。




だから、この間の雨の日だって…。



心臓の奥の方がツキンと痛んだような気がした。










-今日はなんで来なかったんですか。






思わず言葉が喉まで出かかってハッとした。そんなこと聞いて、僕はどうするつもりなんだろう。

お客様にそんなこと、聞こうとしたことなんて今までなかったじゃないか。






ユノさんが僕の異変に気が付いたのか、声を掛けてくる。なんでこういう時、この人はこうも目敏いのだろう。どうしたのか聞かれたって、そんなの僕にも分からなくて感情を持て余してるっていうのに。








ー何でもない。





そう言って帰ろうとした。駄目だ、今日の僕はおかしい。きっと疲れてるんだ。早く帰って休もう。






それなのにユノさんが呼び止めてきて、テミンさんは一緒にご飯に行かないかだなんて誘ってくる。






ユノさんとご飯…。




行きたいかも。だなんて少し気持ちが揺らいだけれど、とにかく今日はもう帰って一旦落ち着かなければ。こんなのいつもの僕じゃない。






首を振って断ればユノさんは眉をひそめて怪訝そうな顔をしたけれど、押し切るようにしてその場を去った。




もっと上手く誤魔化せたはずなのに。それすらも今の僕にはできないみたいだ。

ユノさんは優しいから、きっと僕のことを気に掛けるだろう。






「明日、会いたくないな…」






ユノさんとどう接したらいいのか分からないから。

それでも来なかったら来なかったでまた色々考えてしまうだろうから、この矛盾した気持ちは一体どう処理したらいいのだろう。





家に帰ってすぐにお風呂に入って、ご飯もたくさん食べたけれど、胸のモヤモヤは晴れることがなくて。








テミンさんに嫉妬していたからだなんて、その時の僕には分からなかったのだ。






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト



Comments 2

There are no comments yet.

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/09/09 (Mon) 09:18 | EDIT | REPLY |   

ニカ  

くぅ**さま

コメントありがとうございます〜!
根本的なところの2人のイメージは壊したくないなと思っているので、そう言っていただけると嬉しいです(*´◒`*)♡
シウォンさんとテミンちゃんはこれからもたまに出てきますので楽しみにしてください〜(^∇^)

2019/09/10 (Tue) 07:46 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply